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AIと人間の違いは?「チューリング・テスト」【思考実験をわかりやすく解説】

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チューリングテストとは、「機械は思考できるのか」という問題意識からアラン・チューリングにより提案された、「人工知能(AI)が人間的であるかどうか」を判定するためのテストです。

人工知能・AIとは、問題解決や言語の理解など、人間の知的行動を代わりに行うコンピューターの技術のことで、一般的には「知能のある機械」のことを指します。

1956年から人工知能の分野は誕生し、そのころから「機械は思考できるのか」という問題が提唱されていました。

もし人間と全く同じ受け答えができるAIができたら、そのAIは人間となにが違うのでしょうか。

「チューリング・テスト」では、AIを通じて、「人間らしさ」について考えることができます。

チューリング・テストの内容

1人の審査員が、AIと人間に同じ質問をし、AIと人間はそれぞれ「人間らしく」回答します。

審査員から回答者は見えない状態なので、質問に対するそれぞれの回答から、AIと人間を見分けることができるかという実験です。

質問内容に縛りは無く、審査員は詩を作らせたり、音楽の感想を聞いたり何でも尋ねることができます。AIに求められるのは、高い知能と正確さではなく、「人間らしさ」です。

つまり、機械的に全てを完璧に行うのではなく、人間のようにミスをしたり回答を考えて時間をかけたりする事が求められます。

審査員が人間かAIを区別できなければ、「そのAIは人間らしい知能を持っている」とみなされます。

チューリング・テストに合格したAI

テストが提唱され数十年たったものの、テストに合格するほど「人間らしい」回答ができるAIは現れませんでした。

しかし、2014年に「ウクライナ在住の13歳の少年」という設定のユージーン・グーツマンというAIが、チューリングテストに合格したのです。

・13歳のAIユージーン

ユージーン・グーツマンは2014年に実施された思考実験のイベントで、チューリング・テストに合格した唯一のAIです。実験の結果、審査員の33%が人間だと思い込みました。

ただし、この合格には疑惑が持たれています。その理由には以下の点が挙げられます。

  • ユージーンは13歳という設定のため、答えられない質問がある
  • ネイティブな英語を使えない設定のため、質問が限られる
  • テスト時間が5分という短い時間だったため

こうした疑惑が、「チューリング・テストはその機械が人間的であるかどうかを判別するのには適していないのではないか」という反論も生み出しています。

「中国語の部屋」で考えるAIの思考

人工知能の分野が誕生して以来、「人工知能は思考できるのか(人間的かどうか)」という問題が討論され続けてきました。

人間が人間だと感じればれば「人間的である」とするチューリング・テストの反論として、「中国語の部屋」という思考実験があります。

「中国語の部屋」については下記の記事で詳しく解説しておりますので、参考にしてください。

この実験では、「中国語で質疑応答ができるからといって、中国語を理解していることにはならない」という結果を示しています。

チューリング・テストに当てはめて考えると、「人間的な質疑応答ができるからといって、本当に人間的であることにはならない」と言えます。

AIが人間的な回答になるよう作られているだけで、そのAIは「考えること」ができるかどうかの判断にはならない、ということです。

チューリング・テストに意味はある?

反論を見ていると、こんな定義の曖昧なテストは行う意味がないように思うかもしれません。

しかし、チューリング・テストを人工知能のレベルを測る一定の基準として設けることはできます。ユージーン・グーツマンの合格例があったからこそ、新しい反論が生まれ、「知能」に対する疑問が深まったのも事実です。

チューリングテストは、私たちに「知能とは何なのか?」「人間らしさとは何なのか」ということを考える機会を与え、AIの進化を手助けしているともいえるでしょう。

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