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思考実験「功利の怪物」を解説!多数の幸福は本当に正しいのか?

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思考実験「功利の怪物」は最大多数の最大幸福という功利主義の考えは本当に正しいのか、幸福な在り方とは何なのかについて考える哲学的な問いです。

観たい映画に友達を誘うなら、その映画のジャンルに興味のない人より、興味のある人を選んで誘いますよね?

同じ体験をするにしても、その経験から感じる幸福の度合いは各々で異なります。

より喜んでくれる人に何かを与えたいと思うのは当然な感情です。

思考実験「功利の怪物」は最大多数の最大幸福という功利主義の考えは本当に正しいのか、幸福な在り方とは何なのかについて考える哲学的な問いです。

功利の怪物とは?

功利とは、巧妙と利得、かんたんに言うと私たちの「幸福」のことを指します。

功利の怪物は、同じ経験をした時に、人よりも何倍もの幸福を感じられる存在がいたら…と想定した思考実験です。

例えば、多くの人間はケーキを食べたら幸せを感じます。

その幸福を1とすると、功利の怪物は同じケーキを食べた時に1000の幸福を感じられます。

より多くの幸福を感じられるなら、ケーキが1つしかない場合、功利の怪物に与えるべきです。

ケーキが2つあったとしても、世界全体の幸福総量で見ると、2つとも功利の怪物にあげるべきでしょう。

人間と功利の怪物でケーキを分けた場合は、1002の幸福ですが、功利の怪物が二つとも食べたら2000の幸福になるからです。

つまり、他者に比べ多くの幸福を得られるという前提がある以上、他の大多数を不幸にしても、功利の怪物に与えた方が世界全体の幸福総量は大きくなるのです

さて、功利の怪物を優先するこの考えは間違っているのでしょうか?正しいのでしょうか?

功利の怪物を考察しよう!

「一人だけが幸福で、その他多数が不幸になる世界は間違っている」と思う人が大半でしょう。

実は、功利の怪物は、単純な幸福総量のみを重視する功利主義への反論として使用される思考実験なのです。

幸福が偏ってしまうことで、不満や不幸が生じ、全体のバランスは崩れてしまいます。

幸福とは単に数が多ければ良いという訳では無く、功利主義をつきつめてしまうと、逆に不幸の総量が上がってしまうことも考えられるのです。

現実の功利の怪物

功利の怪物はこの思考実験における架空の生き物ですが、この怪物は実は現実世界に近いものが存在します。

例えば、赤ちゃんや子供です。

子供は大人に比べ何倍も喜んだり悲しんだり、新鮮な反応をします。

つい何かをあげたくなったり、優しくしてあげたりするのは、大人の自分達よりも幸福を大きく感じる子供の笑顔に、自分の心も癒されるからです。

動物好きな人にとっては犬や猫にあてはめる事もできるでしょう。

感情とは伝染するものです。

共感性の高い人であれば、他人の喜ぶ姿を見て幸せになる、ということもあります。

功利の怪物が人より1000倍の幸福を感じられるなら、それだけ周囲に幸福を広げる可能性もあります。

このように考えると、功利の怪物を必ずしも否定することはできません。

まとめ

思考実験「功利の怪物」は功利主義への反論であり、利益ばかりを求めことで生じる問題を考えることができます。

ただ、肯定的な面から見れば、同じ体験でより大きな幸せを感じられるのであれば、その幸せは周りにも伝染し周囲の幸福にも繋がると言えます。

功利の怪物を例に、今一度、私たちの幸福とは何なのか考えてみてはいかがでしょう?