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思考実験「トロッコ問題」とは?正解は?【図と具体例でわかりやすく解説】

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トロッコ問題は、命の選択を迫る思考実験です。
あなたがスイッチを押すと、5人は助かるけど無関係の1人が犠牲に。しかし、押さなければ、5人が亡くなります。
この記事では、トロッコ問題を具体例や類似問題を用いてわかりやすく解説していきます。

今回ご紹介する思考実験『トロッコ問題は、あなたの倫理観、道徳観が浮き彫りになる問題です。

あなたは多くの命を助けるために無関係の1人の命を犠牲にできますか?
それとも、多くの命を助けられる場面でも見て見ぬふりをしますか?

「トロッコ問題」とは?

思考実験とは、特殊な状況の問題を頭の中で想像し、考える実験のこと。
そして、トロッコ問題は命の価値観や、倫理観を問う有名な思考実験です。

思考実験「トロッコ問題」
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暴走したトロッコが線路Aを走ってきます。
線路Aの先には5人の作業員がいますが、避難は間に合いそうにありません。
あなたは、トロッコの進路を線路Bを切り替えるスイッチを見つけました。
スイッチを押せば、トロッコの線路が変わり、5人の作業員は助かります。

しかしスイッチで切り替えた先の線路Bには1人の作業員がいます。
線路Aの5人の作業員が助かる代わりに、線路Bにいる1人の作業員がトロッコに轢かれてしまうでしょう。

この問題では、何らかの方法でトロッコを止めたり、作業員を避難させたりという行動はできません。

さて、あなたは本来無関係だった1人の命を犠牲にして、5人の命を救うためにスイッチを押しますか?
それとも、そのまま無関係の1人を巻き込まないために、5人の命を見捨ててスイッチを押さないでいますか?

トロッコ問題の答え1:スイッチを押す場合

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スイッチを押した場合、あなたは1人を犠牲にすることで、5人の命を助けたことになります。

もしスイッチを押さなければ5人の命が失われますが、スイッチを押せば1人の命で済むのです。
助かる命の数を考えれば、「スイッチを押す」選択をする人が多いでしょう。

このように、より多くの幸福につながる行為が正しいとする考え方を「功利主義」といいます。
トロッコ問題において「スイッチを押す」選択をした人は、倫理観においても功利主義的な考えの側面があるといえます。

実際に統計を取ると、スイッチを使って5人を助け1人を犠牲にする選択が多数派になる場合が多いようです。

トロッコ問題の答え2:スイッチを押さない場合

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スイッチを押さなかった場合、あなたは無関係の1人を巻き込まず、5人の命を見捨てたことになります。

本来、トロッコはAの線路にいた5人の作業員にぶつかるものであり、Bの線路にいた作業員には関係のないものです。
5人の命を救うためとはいえ、事故に無関係の人を犠牲にすることは倫理的に正しいとは言えません

このように、結果の良し悪しに関わらず、人間や社会には守るべき倫理原則がある、という考え方を「義務論といいます。
「スイッチを押さない」と選択した人は、義務論的な価値観があるといえます。

別解:無関係でいるという選択

また、スイッチを押して責任を問われるくらいなら、その場を立ち去ってしまったほうが良い、という考えもあります。

あなたはスイッチを押せば、トロッコの事故の目撃者ではなく、重要な関係者になってしまいます。
スイッチを押さないということは「無関係でいる」という選択にもなるのです。

トロッコ問題はどうすれば正解なのか

この思考実験は、どのような選択をしたかにによって、あなたが重視している道徳観がわかる問題です。

それぞれの選択は、それぞれが以下のような考えや倫理観、道徳に従って導き出されます。

あなたはどちらの考えが近しいでしょうか?

「スイッチを押す」人の心理

  • 単純に助かる命の数が重要
  • 多くを助けたほうがより人道的だと思う
  • 自分が助けられる命なら助けるべき
  • スイッチを押さないと、あとで問題になりそう

「スイッチを押さない」人の心理

  • 無関係の人に危害を加えてはいけない
  • もともと5人が事故にあう運命だったから仕方ない
  • 事故に関わりたくない
  • スイッチを押すことで、事故の責任が自分のものになる

これら以外にも、様々な理由でスイッチを押す・押さないを選択した人もいるでしょう。
いずれにしろ、個人個人の価値観や倫理観に基づいた答えを選んでいますよね。
しかし、その答えも問題の条件を少し変えるだけで、簡単に変わってしまうのです。

トロッコ問題の答えは簡単に覆る?

トロッコ問題の難しさは、条件を加えることで、自分の答えが揺らぐところにあります。
たとえば、線路Aに家族や友人がいたとしましょう。
「スイッチを押さない」を選んだ人も、家族を友人を助けるためにスイッチを押してしまうかもしれません。
このように、人間の倫理観や価値観はほんの些細なことでブレてしまう曖昧なものです。

試しに、以下の問題を考えてみてください。

派生版「トロッコ問題」

トロッコ問題の面白みは、条件を少し変えるだけで答えが全く異なるという点にあります。
ここでは別視点の問題を一つご紹介するので、自分の解答が変わるのか試してみてください。

トロッコ問題派生版「太った男」
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暴走トロッコが、作業員5人に迫ってくる状況は変わりません。

あなたは橋の上でその光景を見ていますが、今回はあなたの近くにスイッチはありません。
しかし隣には太った男がいます。
この男は太っていて体も大きいので、思い切り線路に突き落としてトロッコにぶつければ、トロッコは確実に止まるでしょう。

太った男はトロッコにぶつかり死んでしまいますが、作業員の5人は助かります。
さて、あなたはこの太った男を突き落としますか?

罪悪感を増加させる要素

先ほどは「スイッチを押して一人を犠牲にして5人を助ける」という選択する人が多いのですが、
この条件だと、「太った男を犠牲にする」という選択をする人は少数になります。

1人が犠牲になる結果は変わらないのに、最初の問題とは結果がひっくり返るのです。
これはなぜでしょうか?

理由は、この問題の場合、太った男を突き落とすという行為が必要になるからです。

最初の問題では、「スイッチを押すか否か」という選択が問われていました。
「スイッチを押す」という行為そのものは直接的な加害行為ではありません。

5人の命を助けるためにスイッチを押したら、たまたま1人が犠牲になった」と、いう風に考えることができます。
そのため、「スイッチを押す」という遠回しの加害行為が選びやすくなるのです。

しかし、この問題では「太った男を突き落とす」という直接的な行動が必要です。
結果が同じだったとしても、「自分の手で人を突き落とす」という直接的な加害行動をすることになってしまうのです。

すると、「太った男をあなたが突き落として犠牲することで、5人の命を助けた」という風に少しニュアンスが変わってきますよね。
スイッチを押したときと、犠牲者も助かる命も数字上は同じですが、突き落とすという行為が罪悪感を増加させるのです。

まとめ

トロッコ問題は、「太った男」のように様々な条件を設定することで、多くの派生問題を作りだすことができます。
常に理に適う行いをするのが正しいとも言えず、人間の道徳観を一定のルールで定めることの難しさを物語っています。

あなたは、どんな状況でも自分の価値観を変えず決断することができますか?
さまざまな観点からトロッコ問題を考え、自分の正義に向き合ってみてはどうでしょう?

トロッコ問題に似た思考実験

トロッコ問題は、命の選択や功利主義に関する倫理観を問う思考実験です。
似たようなテーマを扱っている思考実験に、以下のようなものがあります。

興味がある方はぜひ試してみてください。