功利主義(こうりしゅぎ)とは?わかりやすく簡単解説!
功利主義・ユーティリタリアニズム(utilitarianism)とは、イギリスのジェレミ・ベンサムによって提唱された、「できるだけ多くの人が、より多くの利益や幸せを得ること」を重視する考え方です。
記事の目次
功利主義の考え方
功利主義はイギリスのジェレミ・ベンサムによって提唱された、「できるだけ多くの人が、より多くの利益や幸せを得ること」を重視する考え方です。
この記事では、功利主義の具体的な考え方、問題点を紹介します。
それでは、功利主義について、具体的な例をみながら考えてみましょう。
功利主義の具体的な例
人口が10人の国があったとします。
お金持ちが2人、貧乏人が8人です。
お金は人の生活の幸福に直結してきます。
国民が幸せかどうかを表す幸福度を1~10の数字で表したとき、この国ではお金持ちの幸福度が10、貧乏人の幸福度が5になります。
合計すると、この国全体の幸福度は60です。
10×2人(お金持ちの幸福度)+5×8人(貧乏人の幸福度)
=60(国全体での幸福度)
ここで、お金持ちが貧乏人に少しお金を分けることにしました。
お金持ちはお金を失い幸福度が下がりましたが、貧乏人はお金をもらえたので幸福度が上がります。
数字で表すと、お金持ちの幸福度は8に、貧乏人の幸福度は8になりました。
すると、この国全体の幸福度は80に上昇しました。
8×2人(お金持ちの幸福度)+8×8人(貧乏人の幸福度)
=80(国全体での幸福度)
お金を多くの人に配ったことで、この国全体での幸福度は高くなりましたね。
このように、幸福をより多くの人に分けて全体の幸福度を上がることを「最大多数の最大幸福」といいます。
功利主義では、このように幸福や利益をできるだけ多くの人に平等に与え、社会全体の幸福度が高いほうが望ましい社会であると考えるのです。
よくある誤った功利主義の認識
よく、利己的で自己中な人を功利主義的だという人が言いますが、それは誤りです。
功利主義は別名「公益主義」とも呼ばれ、個人ではなく社会全体の利益を最善とする考え方のことを指します。
そのため、功利主義では原則的に自分も他人も同価値とみなし、利己的な視点で物事を見ることはありません。
社会全体の幸福が多い結果になるよう客観的に判断するのです。
功利主義の問題点
より多くの幸福を平等に求めるという、理想的な社会のように思える功利主義ですが、突き詰めていくと問題点も上がります。
それは、少数派の犠牲です。
より多くの人の幸福のためであれば、少数の幸福が犠牲になってしまう可能性があるのです。
先ほど例に挙げた10人の国でも、お金を分配することで、8人の貧乏人の幸福度は上がり国全体の幸福度も上がっていますが、2人のお金持ちの幸福度は下がっていますよね。
功利主義では、より平等で多くの幸福を求めるため、少数派を抑圧してしまうことも考えられるのです。
また、もう一つの問題点に幸福の価値観の違いも上げられます。
幸福や利益の価値観は、個人によって異なります。そのため、どの立場で物事を見るかによって、幸福や利益の度合いも異なってしまいます。
甘いものが好きな人にお菓子をあげるのと、甘いものが苦手な人にお菓子をあげるのでは、幸福度は異なりますよね
功利主義では、立場や価値観の違いによって公平性が損なわれてしまうことがあるため、常に冷静で客観的な視点を持つことが求められるのです。