ヤマアラシのジレンマとは?具体例でわかりやすく解説!人間関係の距離感を考える
「ヤマアラシのジレンマ」とは、「相手と仲良くなりたいのに、距離が縮まることでお互いの心をさらに傷つけあってしまう」という、対人関係における矛盾や葛藤を意味する心理学用語です。
現代では、「自分が傷ついたり人を傷つけたりすることを恐れて、人と交流する前から悩んでしまうこと」を指して表現されることがあります。
記事の目次
ヤマアラシのジレンマとは?
「ヤマアラシのジレンマ」とは、「相手と仲良くなりたいのに、距離が縮まることでお互いの心をさらに傷つけあってしまう」という、対人関係における矛盾や葛藤を意味する心理学用語です。
ヤマアラシと同じように体にトゲを持つハリネズミに例えて、「ハリネズミのジレンマ」と呼ばれることもあります。
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』でも取り上げられたことで、この言葉を知っている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、具体的にどのようなことを指す言葉なのか、詳しく解説していきます。
ヤマアラシのジレンマの寓話
「ヤマアラシのジレンマ」は、ドイツ出身の哲学者・思想家であるアルトゥル・ショーペンハウアーが人との距離の在り方を考える際に提唱した寓話がもとになっています
アメリカ精神分析医ベラックが、人間関係における距離感のジレンマを指してこれを引用し、「ヤマアラシのジレンマ」と名付けました。
ヤマアラシのジレンマ
ある寒い冬の夜のことです。
2匹のヤマアラシは寒さをしのぐために、ピッタリと寄り添いました。
しかし、近づこうとするとお互いのトゲによって怪我をしてしてしまいます。
そこで、お互いを傷つけないために距離を置きました。
しかし、離れると寒くなってしまうため、再び体を近付けようとしますが、相手の鋭いトゲが怖くてなかなか近寄れません。
くっつこうとしては離れて、また近寄ろうとして……ということを繰り返すうちに、ヤマアラシはお互いをケガさせることなく、ほどよく暖かい「ちょうど良い距離」を見つけました。
これと同じように、人間も近しくなればなるほど、様々なことでお互いを傷つけあいます。
そのため、親密になりたくても近づけないというジレンマを抱えていることがあるのです。
ヤマアラシは、体に鋭いトゲを持ったげっ歯類の動物です。
ちなみに、実際のヤマアラシは、トゲを寝かせたり逆立てたりすることができるため、お互いに近づいても傷つけあうことはありません。
相手を大切に思っているのに、相手を傷つけあってしまう、そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。
人間が抱えるジレンマを解決するには、ヤマアラシと同じように、交流によってお互いの距離を図る必要があるのです。
人間でいえばどんな状態?
ヤマアラシのジレンマを一言で表すならば、「自分以外の人間との距離感が上手くつかめずに、悩んでいる心理状態」です。
人はひとりでは生きてはいけないため、自分以外の誰かと繋がりを持とうとします。
しかし、相手との距離が近付くほど、今まで気づかなかった欠点が見えてきて幻滅したり、遠慮がなくなり、相手を傷つける言葉をぶつけてしまう、などということも起こってくるでしょう。
このように相手との距離感に悩み揺れ動く心理状態のことを「ヤマアラシのジレンマ」といいます。
あるいは、こうした状態から妥協点を見つけるため試行錯誤する過程のことを意味することもあります。
現代のヤマアラシのジレンマ
本来は、人との実際の交流で傷つけあったり、疎遠になったりすることを悩むことをヤマアラシのジレンマといます。
しかし現代では、自分が傷ついたり人を傷つけたりすることを恐れて、人と交流する前から悩んでしまうことも「ハリネズミのジレンマ」というようにもなりました。
SNSの普及によって、他人のことが見えすぎてしまうようになった現代では、このような「現代のヤマアラシのジレンマ」に悩む人が増えています。
現代のヤマアラシのジレンマには、以下のような例が挙げられます。
- 友人や恋人にも本音で話すことができない
- お互いに相手の顔色ばかり伺ってしまう
- 嫌われたくないので距離を置いてしまう
恋愛や友情など、より深い関係を築こうとしたときに、ヤマアラシのジレンマに悩む人は多くいます。
ヤマアラシのジレンマを乗り越えるためには
人付き合いや気遣いというのは、非常に難しく繊細なものです。
私たちは常に社会の中で人同士のつながりを持って生きているため、大なり小なり人間関係の悩みを抱えてしまいます。
ヤマアラシのジレンマに陥ってしまったら、ヤマアラシたちのように「お互いの最適な距離を見つけること」が人間関係においても重要です。
自分を知り相手を知ること
ヤマアラシのジレンマを乗り越え、お互いに心地よい関係を築くためには、自分自身を知ることと、他人が自分とは違う人間だと理解することが大切です。
自分が平気なことでも、相手にとっては嫌なことかもしれないし、逆に相手は深く考えていないことでも、自分は気になってしまうことだってあります。
他人である以上、自分の考えを100%理解してもらうことも、相手の気持ちを100%理解することなどできないのです。
相手の言葉に丁寧に耳を傾け、自分の気持ちを整理し真摯に伝えることを心掛ける、そういった人間関係の基本が一番大事なのです。
お互いを尊重しあった人間関係を築いていくことで、自然とヤマアラシのジレンマは乗り越えることができます。
自分と他人の違いを考える思考実験
思考実験の中には、自分自身とは何か・アイデンティティを考えるものや、他人には理解できない個人の内的体験・クオリアについて考えるものがあります。
ヤマアラシのジレンマに悩んだ人は、ぜひこちらの思考実験について考えてみてはいかがでしょうか。