}

「バター猫のパラドックス」とは?永久機関のイグノーベル賞をわかりやすく解説

Check point !

バター猫のパラドックスは物理の法則「ネコひねり問題」と、ジョークの法則「マーフィーの法則」を合わせた思考実験です。
「猫は着地の際、体をひねり必ず足を下にする」問題と、「バターを塗ったトーストは必ずバターの面が下に来る」法則を組み合わせることで、永久機関ができるのではないかと提唱されました。

バター猫のパラドックスとは?永久機関の思考実験?

バター猫のパラドックスは、猫の背中にバターを塗った面を上にしたトーストをくっつけると、永久機関が成立するのではないか、というジョーク的な思考実験です。

永久機関とは?
外部から電力や石油などあらゆるエネルギーを受け取らずに永久に動き続けられる機関・装置のこと。
その装置からエネルギーをを取り出せば、無限にエネルギーを得ることができる夢のような装置です。
過去に様々な研究が行われてますが、実現は不可能とされています。

「一体どういうこと?」となってしまう、とんでもない思考実験ですね。
どんな思考実験なのか、詳しく見ていきましょう。

思考実験「バター猫のパラドックス」

猫は高い所から落ちても、背面から落ちたとしても、必ず足を下にして着地します。
この不思議な現象は「猫ひねり問題」と言われる物理学の問題です。

一方「マーフィーの法則」は日常でよくある悲しい経験をまとめたジョーク的な法則です。
マーフィーの法則では、バターを塗ったトーストは必ずバターを塗った面が地面に着地するとされています。

そこで、猫の背中にバターを塗った面を上にしたトーストを括り付けてみたとしましょう。

バタートーストを括り付けた猫が高いところから落ちたら、どうなるのでしょうか?

ひねり問題とバタートーストの法則、より地面への誘引力が高い法則が優先され、トーストか猫のどちらかが地面に着地することになります。

しかし、二つの法則の地面への誘引力が同等であった場合はどうでしょうか。

二つの力が釣り合いバタートーストを背負った猫は回り続け、大きなエネルギーを発生し続ける永久機関となります。

バター猫によって永久機関が完成すれば、世の中のすべてのエネルギー問題は解決することになるでしょう。

もちろん、猫にバターを塗ったトーストを括り付けるだけで永久機関が完成することはありません。
これはあくまで、二つの法則を合わせることで考えられる矛盾をジョーク的な感覚で考える思考実験です。

バター猫の法則の元ネタ:2つの法則

それでは、この思考実験のもととなった「ネコひねり問題」と「マーフィーの法則」について詳しく見ていきましょう。

ネコひねり問題とは?

まず、猫は常に足を下にして着地するというネコひねり問題について考えてみましょう。

猫が背中から落ちた時、周りから何の力を受けていないのにも関わらず、必ず足を下にして着地します。
一見すると、物理法則を無視した動きで、これは「ネコひねり問題」として話題になりました。

そこで、猫が落下する瞬間を連続撮影したところ、猫は落下する際に体を“くの字”に曲げ、上半身を下半身をそれぞれねじることで体の回転を調整し、足で着地していることがわかりました。

このことからネコひねり問題は、猫は脊椎が非常に柔軟でバランス感覚が発達しているため、空中でも上半身と下半身を器用にひねり、着地姿勢を制御することができると結論づけられました。

マーフィーの法則とは?

マーフィーの法則は、多くの人が経験したことのあるような哀愁のある失敗を「法則」として表したジョークです。

失敗や不幸などの悲しい出来事は印象に残りやすく、多くの人が共感します。
そうした日常の悲しいあるあるネタ集がマーフィーの法則です。

有名なマーフィーの法則として、以下のようなものがあげられます。

  • 失敗する可能性がある事象は、必ず失敗する
  • 洗車をすると雨が降る
  • 機械が動かないことを証明して見せようとすると、正常に動き出す

細かい日常のことでいうなら、「トイレにいるときに限ってインターフォンが鳴る」「解答欄のミスはテスト終了直前に気づく」といった事象も、マーフィーの法則の一つとして挙げられます。

もちろん、科学的な根拠がある法則ではありませんが、多くの人が共感する法則ではないでしょうか。

「落としたトースト」の法則は本当にあった?

バター猫のパラドックスの前提条件、「バターを塗ったトーストは必ずバターを塗った面が地面に着地する」というのも、もっとも有名なマーフィーの法則の一つです。

しかしこの「落としたトースト」の法則は、実際にほかの根拠から裏付けできるものであるとロバート・マシューズによって論文が発表されました。

「落としたトースト」の法則には、マーフィーの法則のように悲しい出来事として印象に残りやすいという理由以外に、以下の要因が考えられます。

  • トーストはバターを塗った面を上にしていることが多い
  • トーストが落ちる速度と時間が、トーストが180度回転する程度である

これらの要因によって、バターを塗ったトーストを落とすと180度回転し、バターを塗った面が下を向くことが多くなるのです。

ジョーク的な経験則に過ぎないマーフィーの法則を真剣に考察したこの論文は、ユーモアのある研究に与えられるイグノーベル賞を受賞しました。

バター猫のパラドックスを考察!回答例を紹介

この思考実験は少し馬鹿げた内容ですが、そこに一定の論理があるからこそ、ユーモアがあって面白く、多くの学者を引き付けるのでしょう。

そのため、この思考実験にはユーモアに富んだ多様な回答があります。

反重力が生じる・永久機関が完成する

着地の際、バターを塗った面と猫の足がともに地面に着地しようとします。

そのため、猫は高速で回転しながら徐々に落下速度が下がり、地面から少し上のところで宙を浮いた状態になり、反重力が生じる、という回答があります。

さらには、この回転エネルギーを利用することで永久機関が成立し無限のエネルギーを獲得できる、という回答もあります。

猫が着地しトーストがひっくり返る

別の想定結果には、「猫が足を下にして着地したあと、ひっくり返りバターを塗ったトーストが地面に着地する」という回答があります。

これは、猫の足のほうが地面への誘引力が高いものの、猫が地面に着地するとバターを塗った面の誘引力が大きくなると仮定した場合の回答です。

もし空中での誘引力が逆ならば、バターを塗った面が下に着地し、ひっくり返り猫が足で着地する、ということになります。

この視点では、猫の足と、バターを塗った面のどちらが地面への誘引力が高いのかという新しい問題が生じます。

いずれにしても、猫の安全が第一ですね。

まとめ

バター猫のパラドックスはユーモラスなパラドックスです。

当然、実際にやるには猫がかわいそうですし、バタートーストがもったいないので思考実験の域をでません。

しかし、実際に検証されないからこそ、自由に考える余地があるのです。
あなたなりに面白い回答を導いてみてはいかがでしょうか?