「セルフ・ハンディキャッピング」とは?テスト前に掃除する謎の心理!
大事なテストの前など準備が必要な時に限って、掃除を始めたり夜更かしをしたりと、不要なことをしてしまった経験はありませんか?そうした言動は、セルフハンディキャッピングといいます。
自分の評判やプライドを守ろうとする心理から、「失敗しても仕方ない」と自分も周囲も納得できるように「失敗する理由」を作ろうとするのです。
記事の目次
セルフ・ハンディキャッピングとは?自分に逃げ道を作る心理
テストの前日に掃除を始めたり、夜更かしをしたりしてしまった経験はありませんか?
さらに、当日に「全然準備できなかった」「夜更かしで体調が悪い」などど周囲に万全でないことをアピールしたことがある人も少なくないはずです。
そうした言動は、セルフハンディキャッピングといいます。
事前に「自分が全力を出せなかった理由」をアピールしたり、全力で挑めない状況に自分を追い込む言動です。
失敗してしまった時の恐怖や不安から、「全力でやればできる」と思える余地を残すことで、自分のプライドを守ろうとする心理から行われます。
セルフ・ハンディキャッピングの実験例
アメリカの心理学者、スティーヴン・バーグラスと、エドワード・ジョーンズは以下のような実験をしました。
知的作業能力向上の薬の実験
最初に被験者をAとB2つのグループに分け、「非常に難しいテストを行います。」と説明をした上でテストを配ります。
そして、Aグループは難しいテストを、Bグループには簡単なテストを行わせました。
Aグループの人は「説明通り難しいテストだ」と思い、Bグループの人は「聞いていたより簡単なテストだ」という気持ちになりますよね。
テストの採点が終わった後、Aグループには実際の点数に関係なく「テストの結果は非常に良かった」と称賛しました。
一方で、Bグループには実際のテストの結果をそのまま伝えました。
Aグループの人には「自分の能力ではない、たまたま好成績になった」と、逆に自分の能力に対して不安を感じるように仕向けたのです。
その後「今度は薬を飲んでから同じテストを受けてもらう」と両グループに説明します。
薬は、一時的に能力が向上する薬と、一時的に能力が低下する薬のどちらかを被験者に選んでもらいます。
テストを受けるのであれば、「能力が向上する薬」を選んだほうがいいに決まっています。
しかし、Aグループは「能力が低下する薬」を選ぶ人の割合が非常に高くなったのです。
Aグループは1回目のテストで「自信が伴わない成功」を経験したことで「次は上手くいかないかも」と不安が増し、セルフハンディキャッピングとしてAの薬を選ぶ人が多くなったと考えられます。
もし同じテストを2回受けて、2回目のほうが低くなったとしても「能力が低下する薬を飲んだから」という言い訳ができるからです。
なぜセルフ・ハンディキャッピングをしてしまうのか
上記の実験からわかるように、自分の評価に対して自信が伴っていない人ほど、セルフハンディキャッピングをしてしまう傾向があります。
誰しも失敗は怖いですし、一度上がった自分の評判が下がってしまうことを嫌がるのは当然の気持ちですよね。
そうした失敗や失望への恐怖心から、事前に周囲の期待度を下げようと、セルフハンディキャッピングをしてしまうのです。
そうすれば、失敗したとしても「仕方ない」と自分も周囲も納得できるようになるからです。
反対に、セルフハンディキャッピングをした上で成功すると、あらかじめ期待度を下げていた分、周囲からの評価が上がりやすくなります。
つまり、セルフハンディキャッピングをすることで、失敗しても「仕方ない」と言い訳が通り、成功したら「手を抜いても出来ちゃうんだ」と実力の伴わない高評価がつくようになるのです。
そのため、「全力で挑んだのに結果が悪かった場合」の恐怖が増して、セルフ・ハンディキャッピングが癖になり、何事にも何事も手を抜いてしまうようになってしまうこともあります。
セルフ・ハンディキャッピングの克服法は?
セルフ・ハンディキャッピングが癖になってしまうと、何事にも手を抜いたりやる気を出すのが難しくなってしまいます。
何かにつけてセルフハンディキャッピングをしてしまって、自分自身でも困っている人は少なくありません。
セルフ・ハンディキャッピングを克服するためには、失敗への恐怖を乗り越えることが重要です。
そのためには、「自分の能力を客観的に認識すること」が必要になります
自分の能力を知っていれば、物事の結果に対して必要以上に不安や恐怖を感じることも無くなります。
そうはいっても、自分を律していくのはなかなか難しいものです。
まず簡単な克服法として、自分自身が逃げられないような環境を整えていくことをお勧めします。
事前に周囲の人たちに目標を宣言したり、SNSで目標や記録を書いたりすることも効果的です。
例えばテスト前なら、図書館や喫茶店など余計なことができない環境に行ったり、周囲に目標点を宣言したりして、逃げ道をなくしてしまえばいいのです。
言い訳の前に身体を動かして少しでも行動に移すようにすれば、自信も能力も身に付き、セルフハンディキャッピングの癖が抜けていきます。