命を考える有名な思考実験5選!あなたはどこまで考えられる?【哲学】

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思考実験とは、読んで字のごとく「思考上で行う実験」のことです。
今回は、そんな思考実験の中でもトロッコ問題や臓器くじなど、「命」の価値観を考え直す有名な思考実験をご紹介します。
極端な状況をイメージすることで、普段は意識できない抽象的な倫理観や哲学観が浮き彫りになります。あなたはどこまで考えられますか?

思考実験って何?

思考実験とは、読んで字のごとく「思考上で行う実験」のことです。
現実的に不可能な条件や、倫理的に実行できない条件の実験、あるいは条件を極端化して、頭の中の想像で実験を行います。

「仮に○○だったとして」「こういった状況の場合」というように、現実的でない条件や極端な状況が設定されることが多いです。
これにより、現実では不可能な事象や、抽象的でわかりにくい問題に対しても、考えやすくなるのです。

命に関する有名な思考実験5つ

どのような分野でも思考実験は行われますが、哲学や倫理の分野には、有名な思考実験が多く存在します。
極端な状況をイメージすることで、普段は意識できない抽象的な倫理観や哲学観が浮き彫りになります。

考えれば考えるほど、思考の迷路をさまよってしまうのが、哲学や倫理の思考実験の面白いところです。
今回は、そんな思考実験の中でも「命」の価値観を考え直す有名な思考実験を5つご紹介します。

トロッコ問題

トロッコ問題は、思考実験の中でも有名な問題です。
この思考実験は、無関係の1人を犠牲に5人の命を救うか否かという究極の選択が問われます。
「線路の先の作業員があなたの友人や家族だったら」「線路の先の人数が違ったら」など条件を少し変えるだけで全く違う答えになる点も、この思考実験の面白いところです。
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トロッコ問題
暴走したトロッコが線路を走ってきます。
線路の先には5人の作業員がいますが、避難は間に合いそうにありません。しかし、あなたはトロッコの進路を線路Bを切り替えるスイッチを見つけました。
スイッチを押せば、トロッコの線路が変わり、5人の作業員は助かります。ただし、スイッチで切り替えた先の線路Bには1人の作業員がいます。
線路Aの5人の作業員が助かる代わりに、線路Bにいる1人の作業員がトロッコに轢かれてしまうでしょう。さて、本来無関係だった1人の命を犠牲にして、5人の命を救うためにスイッチを押しますか?
それとも、そのまま無関係の1人を巻き込まないために、5人の命を見捨ててスイッチを押さないでいますか?

臓器くじ


臓器くじは、トロッコ問題と似た思考実験で、ランダムに決定した1人を犠牲に5人の命を救う制度は正しいかどうかという問題です。
「最大多数の幸福」を求める功利主義について考える問題でもあります。
実際にこの制度が行われた社会で自分が生きるとしたら、と考えるとより興味深いものになります。

臓器くじ
とある国では、臓器移植を待つ患者はたくさんいるものの、臓器提供をしてくれる人はなかなかいませんでした。
そこで、定期的にくじ引きをして、健康な全国民の中から臓器提供者を1人選ぶ社会制度「臓器くじ制度」ができました。くじ引きで選ばれた人は、臓器すべてを提供しなくてはいけません。
その人は臓器を提供することで死んでしまいますが、1人の臓器を分配することで、最低でも5人も患者を救えます。また、臓器くじには公平に行うために下記のルールがあります。
・くじに不正行為は絶対に起こりえない
・移植手術は必ず成功し、5人は絶対に助かる
・臓器提供以外に患者が助かす方法はないくじは完全に平等に行われるため、地位や権力、知名度、年齢を問わず、誰もが当たる可能性があります。
拒否権はなく、選ばれた人は臓器移植を待つ人のために犠牲にならなくてはいけません。
しかし、1人の犠牲により多くの患者が助かります。さて、この臓器くじは正しい制度なのでしょうか?

スワンプマン

自分が死んだ後のことを、誰もが一度は想像したことはあるのではないでしょうか。
スワンプマンは、自分が死んだ後に、自分と全く同じ見た目と内面を持った存在が、自分として生活していたらという問題です。
命に関しての考えだけでなく、アイデンティティも問われる思考実験でもあります。

スワンプマン
ある男がハイキングに出かけたら、沼の傍で雷に打たれて死んでしまいます。その時、雷が化学反応を起こし、沼の泥から死んだ男と全く同じ見た目で、同じ記憶をもつ存在が生まれました。
この存在を、仮にスワンプマン(泥男)と呼びましょう。スワンプマンは身体や性格も死んだ男と何一つ変わらず、記憶や知識、感性も全く同じです。
趣味嗜好や癖、体質まで、スワンプマンと死んだ男と違うところは何一つありません。スワンプマンは死んだ男と同じ自我と記憶を持っているため、「自分は雷にあたったが奇跡的に生きていた」と認識しています。
そのため、スワンプマンがそのまま死んだ男と同じように家に帰り、死んだ男と同じような人生を送ります。スワンプマンと男の違いは何一つありませんので、スワンプマンも周囲の人も、誰も気が付くことはありません。さて、この場合スワンプマンは死んだ男と同一人物と言えるのでしょうか?

ザ・バイオリニスト

ザ・バイオリニストは、他人の命ために、同意もなく自分の自由を長期間拘束されるとしたらという思考実験です。
突拍子もない状況に思えますが、これは望まぬ妊娠をした女性とほぼ同じ状況なのです。
この思考実験では、中絶や自由意志の関しての問題が問われています。

ザ・バイオリニスト
世界的有名なバイオリニストが大病にかかり、あなたの血液でしか救うことができないことがわかりました。
ただし、治療するには9ヶ月の間、バイオリニストの体とあなたの体を管で繋ぎ輸血し続けなければなりません。つまり、バイオリニストを助けるには、あなたの9ヶ月間の自由が犠牲となるのです。ある日、目が覚めると、あなたは病院にいて、そのバイオリニストの体と管でつなげられていました。
どうやらバイオリニストの狂信的ファンがあなたを拉致し、勝手に治療を開始してしまったようです。あなたは突然拉致され、意識のない間につながれたため、治療に協力するとは一言も言っていません。このまま治療を続けられたら、あなたは9ヶ月間ずっと自由を失うことになります。
しかし、ここであなたが治療を中断してしまえば、バイオリニストは死んでしまいます。さて、この状況で、あなたにバイオリニストを救う義務があるでしょうか?
また、バイオリニストへの輸血を拒んだ場合、それは殺人になるのでしょうか?

カルネアデスの板

カルネアデスの板は、自分の命が危険な場合にやむを得ず犯した殺人は無罪か否かを考える思考実験です。
倫理観や命の重さなどの哲学の問題だけでなく、緊急避難に関する法律の問題としても使用されます。

カルネアデスの板
ある日、一隻の船が難破し、乗組員全員が海に投げ出されてしまいます。
一人の男は必死に泳ぎ、偶然見つけた船の板切れにすがりつきました。なんとか助かったと思った矢先、この板切れにつかまろうとする一人の乗組員が現れます。できれば一緒につかまって助けを待ちたいところですが、この板切れは一人の重さにしか耐えられそうにありません。
板切れが沈んでしまえば、男も乗組員も溺れて死んでしまいます。乗組員は必死に板切れにすがりつこうとしてきますが、男は自分の命を守るために、やむを得ず乗組員を突き飛ばしました。
その結果、突き飛ばされた乗組員は掴まるものもなく力尽き、水死してしまいます。男はその後裁判にかけられますが、やむを得ない行動だったとして殺人の罪に問われることはありませんでした。
さて、この男は本当に無罪といえますか?

まとめ

以上、有名な思考実験5つをご紹介しました。
極端な事例に起こすことで、今まで抽象的に考えていた命に関する自分の考え方がわかりやすくなったのではないでしょうか。

哲学や倫理観を考える思考実験に、明確な答えはありません。
自分1人では固まった答えしか出ない場合も、身近な人に聞いてみると、意外な答えが出てくることも。
それぞれの思考実験を、詳しく解説したページも併せて紹介していますので、気になった思考実験があった方は、個別の解説記事から、さらに自分の考えを深めてみてください。